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高松地方裁判所 平成10年(ワ)133号 判決

原告 株式会社香川銀行

右代表者代表取締役 大林一友

原告 大林一友

右両名訴訟代理人弁護士 近石勤

右同 松本修二

被告 行財政改革推進会

右代表者 A

被告 株式会社四国タイムズ社

右代表者代表取締役 A

被告 A

右三名訴訟代理人弁護士 藤川明典

主文

一  被告三名は、原告大林一友に対し、左記の行為をしてはならない。

別紙物件目録記載の各建物の正面入口から半径二〇〇〇メートル以内の地域において、別紙放送文句概要記載の文句を、街頭宣伝車により放送する行為

二  被告三名は、原告株式会社香川銀行に対し、左記の行為をしてはならない。

別紙物件目録記載の各建物の正面入口から半径二〇〇〇メートル以内の地域において、別紙放送文句概要記載の1(1) (2) 及び2の文句を、街頭宣伝車により放送する行為

三  被告株式会社四国タイムズ社は、原告大林一友に対し、左記の行為をしてはならない。

右被告が発行する月刊新聞「四国タイムズ」紙において、別紙記事概要の記載の記事を掲載し、頒布する行為

四  被告株式会社四国タイムズ社は、原告株式会社香川銀行に対し、左記の行為をしてはならない。

右被告が発行する月刊新聞「四国タイムズ」紙において、別紙記事概要記載の一1(1) (2) 、2及び二の記事を掲載し、頒布する行為

五  被告三名は、連帯して、原告大林一友に対し、金八〇万円及びこれに対する平成一〇年四月八日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

六  被告A及び被告株式会社四国タイムズ社は、連帯して、原告大林一友に対し、金一二〇万円及びこれに対する平成一〇年四月八日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

七  被告三名は、連帯して、原告株式会社香川銀行に対し、金四〇万円及びこれに対する平成一〇年四月八日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

八  被告A及び被告株式会社四国タイムズ社は、連帯して、原告株式会社香川銀行に対し、金六〇万円及びこれに対する平成一〇年四月八日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

九  原告両名の被告三名に対するその余の請求をいずれも棄却する。

一〇  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告両名の負担とし、その余は被告三名の負担とする。

一一  この判決は、第一項ないし第八項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告三名は、原告両名に対し、左記の行為をしてはならない。

別紙物件目録記載の各建物の正面入口から半径二〇〇〇メートル以内の地域において、別紙放送文句概要記載の文句を、街頭宣伝車により放送する行為

二  被告株式会社四国タイムズ社は、原告両名に対し、左記の行為をしてはならない。

右被告が発行する月刊新聞「四国タイムズ」紙において、別紙記事概要記載の内容の記事を掲載し、頒布する行為

三  被告三名は、連帯して、原告両名に対し、それぞれ金一〇〇〇万円及びこれに対する平成一〇年四月八日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告三名は、連帯して、原告両名に対し、別紙謝罪広告文の謝罪広告を、四国新聞社会面に、二段五センチメートルの大きさで、表題部は二五ポイント相当活字(ゴシック)、その余の部分は一二ポイント相当活字で、一回掲載せよ。

五  訴訟費用は被告三名の負担とする。

六  仮執行宣言

第二事案の概要等

一  事案の概要

本件は、原告株式会社香川銀行(以下「原告香川銀行」という。)及び同社の代表取締役頭取である原告大林一友(以下「原告大林」という。)が、被告三名から別紙放送文句概要記載の街頭宣伝活動(以下「本件街宣活動」、「本件街宣行為」ともいう。)をされたことにより、また、被告株式会社四国タイムズ社(以下「被告四国タイムズ社」という。)及び被告A(以下「被告A」という。)から別紙記事概要の記事を掲載されたことに(以下「本件記事掲載行為」ともいう。)より、原告両名の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に職務を行い日常生活を営む権利が毀損されたとして、被告三名に対して、人格権に基づき右放送活動の差止め、不法行為に基づく損害賠償、及び民法七二三条に基づき謝罪広告を、右に加えて、被告四国タイムズ社に対して人格権に基づき右記事の掲載の差止めを、それぞれ求めた事案である。

二  前提事実(当事者間に争いがないか、各文末記載の証拠等により容易に認められる事実)

1  当事者

(一) 原告香川銀行は、銀行業を営んでおり、肩書地に本店を置くほか、香川県内外に八〇か所の支店及び九か所の出張所を置き、平成元年二月以前は、株式会社香川相互銀行であった。原告大林は、昭和六一年以降原告香川銀行の代表取締役頭取であり、平成四年四月一四日から香川県選挙管理委員会委員長の職にある。(乙一七、二〇)

(二) 被告行財政改革推進会(以下「被告推進会」という。)は、自治省に届け出のある政治団体である。被告四国タイムズ社は、新聞の発行及び販売等を業とする会社であり、月刊新聞「四国タイムズ」(以下「四国タイムズ」という。)を発行しており、主として香川県下の購読者に対し、郵送により頒布している。被告Aは、被告推進会の代表者である。また、同人は、被告四国タイムズ社の代表取締役で、編集発行人でもあり、四国タイムズの執筆者である。

四国タイムズの発行部数は約一万部である。

2  被告三名の本件街宣活動及び本件記事掲載行為(以下、両行為を「本件各行為」ともいう。)

(一) 被告ら(被告らが、誰を指すかについては後記三4のとおり争いがあり、第三の四において示す。)は、原告両名に対し、別紙物件目録記載一の原告香川銀行本店周辺において、被告A運転の軽ワゴンでその周りをゆっくりと一周して玄関前等で停車するなどして、平成九年九月二六日及び同月三〇日においては別紙放送文句概要2の内容を、同年一〇月一日においては別紙放送文句概要記載の1(1) 及び2の内容を、同月二日及び六日においては別紙放送文句概要記載の1(1) ないし(3) 及び2の内容を、同月三日及び同月九日以降の日においては別紙放送文句概要記載全部の内容を、それぞれテープで放送をしたうえ、特に同年一二月以降その放送回数を増し、最終的には、同年九月二六日から平成一〇年二月七日までの間に、実日数五〇日、延べ回数一一〇回にわたって右内容の放送をそれぞれ行った。(甲五の1ないし3、六、七、一四、一六、一七、乙一七、一八、弁論の全趣旨)

(二) 被告ら(右(一)と同様に争いがある。)は、原告両名に対し、別紙物件目録記載二の原告大林の自宅周辺において、平成一〇年一月一日から平成一〇年一月一五日までの間に、実日数一〇日、延べ回数一一回にわたって被告A運転の軽ワゴン上から別紙放送文句概要記載全部の内容の放送を行った。(甲一四、一六、一七、弁論の全趣旨)

(三)(1)  被告四国タイムズ社は、四国タイムズの平成六年九月五日付号から別紙記事概要の一部又は全部を内容とする記事を掲載し始め、平成六年九月五日付号に別紙記事概要記載の一1(4) の記事を、平成七年六月五日付号に別紙記事概要記載の一1(4) 及び2の各記事を、同年一〇月五日付号に別紙記事概要記載の一1(2) 及び(3) の各記事を、平成八年五月五日付号、平成九年四月五日付号に別紙記事概要記載の一1(2) ないし(4) 及び2の各記事を、同年九月五日付号に別紙記事概要記載の一1(1) ないし(4) の各記事を、同年一〇月五日付号に別紙記事概要記載の一1(1) ないし(4) 及び2の各記事を、同年一一月五日付号に別紙記事概要記載の一1(2) 及び(3) の各記事を、同年一二月五日付号に別紙記事概要記載の一1(1) ないし(4) 及び2の各記事を、平成一〇年一月五日付号に別紙記事概要記載の一1(1) ないし(5) 及び2の各記事を、それぞれ掲載した。

これに加えて、被告四国タイムズ社は、平成七年二月五日付号から六月五日付号まで、同年八月五日付号、同年一〇月五日付号から平成八年六月五日付号まで、同年一〇月五日付号、平成九年四月五日付号から平成一〇年一月五日付号に別紙記事概要記載二の欄外袖記事を掲載した。

(2)  右各新聞は、その発行日のころ、香川県下の多数の購読者に頒布された(甲八の1ないし32、乙二〇、弁論の全趣旨)。

3  原告両名の対応

原告両名が、被告三名に対し、平成一〇年一月半ばころ、本件街宣活動及び別紙記事概要記載の記事の掲載の中止を求めたが、被告らは右活動を止めないばかりか、その回数を増加させた。被告らは、平成一〇年一月に、原告両名から仮処分の申立てがなされ、右決定が出た後、街宣活動を中止した(甲八の30、乙一七、一八、弁論の全趣旨)。

三  争点

1  別紙放送文句概要記載の街宣活動及び別紙記事概要記載の記事掲載行為(本件各行為)は、原告大林の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に職務を行い日常生活を営む権利を、原告香川銀行の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に業務を営む権利を毀損するか。

(原告両名の主張)

別紙放送文句概要記載の街宣活動の放送内容及び別紙記事概要記載の記事内容(以下「本件内容」ともいう。)は、原告大林の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に職務を行い日常生活を営む権利を、原告香川銀行の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に業務を営む権利を毀損する。

(被告三名の主張)

四国タイムズは特定の購入先に配布するものであり、日刊紙のように一般人が自由に入手し得るものではないうえ、発行部数も一万部と少ないから、社会への流布の可能性は少ない。

街宣活動についても、軽ワゴン上からバックミュージックを流すと共にさほど大きくない音で放送を行うだけであり、街宣車というより広報車というべきである。また、時折、別紙放送文句概要記載の内容が放送されるにすぎず、大半は選挙管理委員会委員長を辞めてもらおうとする内容の放送だけであり、このような表現方法は社会的に許容された相当な範囲の行為である。

2  被告三名の、前提事実2以外の本件内容の記事掲載行為の有無

(原告両名の主張)

被告四国タイムズ社は、四国タイムズの平成六年九月五日付号に別紙記事概要記載の一1(2) 、2及び二、同年一〇月五日付号に別紙記事概要記載の一(2) ないし(4) 及び二、同年一一月五日付号に別紙記事概要記載の一1(3) 及び二、平成七年一月五日付号に別紙記事概要記載の二、同年六月五日付号に別紙記事概要記載の一1(2) (3) 、同年一〇月五日号に別紙記事概要記載の一2、平成九年六月五日付号に別紙記事概要記載の一2、同年七月五日付号に別紙記事概要記載の一1(3) 及び2、同年八月五日付号に別紙記事概要記載の一1(2) 及び2、同年九月五日付号に別紙記事概要記載の一2及び二、同年一一月五日付号に別紙記事概要記載の一1(1) 及び2の各記事を掲載した。

(被告四国タイムズ及び被告Aの主張)

前提事実2以外の記事の掲載については、本件内容の記載が認められないし、本件内容に該当するか疑問である。

3  被告三名の本件各行為は、公共の利害に関する事実でその目的が専ら公益を図る目的からなされ、かつ真実であることが証明できるから違法性がないといえるか。仮に真実性の証明ができないとしても、真実と信じるについて相当の理由があって故意過失が阻却されるか。

(被告三名の主張)

原告大林に公正性、潔癖性を疑わせる事実があれば、原告大林の務める選挙管理委員会委員長の職に要求される選挙の公明性、公正性、正確性が疑われることになるのであり、被告ら(ただし、本件街宣活動については被告推進会及び被告A、本件記事掲載行為については被告四国タイムズ及び被告Aを指す。)は、こうした原告大林の選挙管理委員会委員長としての不適格性を訴え辞職を求めるというものである。したがって、公共の利害に関する事実であり、かつ、専ら公益を図る目的によるものというべきである。そして、本件内容は、以下の(一)ないし(五)にみるとおり、いずれも真実であるから違法性がない。

仮に、その証明ができなかったとしても、以下の(一)ないし(五)にみるとおり被告三名がこれを真実と信じるについて相当な理由があったものであるから、本件各行為は故意過失がなく、したがって不法行為とならない(なお、被告三名は、以下の(一)ないし(五)における「被告ら」とは、別紙記事概要記載の記事掲載については被告A及び被告四国タイムズ社を指し、本件街宣活動については、被告A及び被告推進会を指すと主張している。)

(一) 別紙放送文句概要記載の1(1) 及び別紙記事概要記載の一1(1) について

(「原告香川銀行の頭取である原告大林には、同銀行の行員に命じて、同行の顧客をして、経営破綻した日産生命の保険に加入させた、銀行法第一二条に違反する疑惑がある。」との内容について。以下「銀行法違反の疑惑」ともいう。)

<1> 原告大林は、役員会において、銀行法一二条違反となる、日産生命の保険販売を扱うと提案し、反対があったにもかかわらずこれを強行した。被告らは、役員会に出席して反対した人の話を聞いた人から、右情報を確認した。

<2> 被告らは、平成八年ころ、原告香川銀行の元行員の女性から、「原告香川銀行に自己の定期預金の扱いをまかせてほしいと言われた後、知らないうちに日産生命に加入させられていた。」と聞いた。

<3> 被告らは、原告香川銀行の取引先の社長から、原告香川銀行の行員が「ローンを組んで日産生命に入って下さい。」と述べ、支店長も一緒に加入を求めたということを聞いた。

<4> 被告らは、<3>とは異なる原告香川銀行の取引先の社長から、保険の勧誘の際、日産生命の社員も香川興産株式会社(以下「香川興産」という。)の社員も来ず、原告香川銀行の行員だけが来たということを聞いた。

<5> 日産生命が破綻した後の平成九年七月三〇日、被害者の会が開催されたが、原告香川銀行の勧誘による被害者の数が全国一六三行中最大で、二位の倍以上であり、被害者の中には警察官、弁護士、検察官がいた。

<6> 被告Aは、日産生命の被害者の会に出席したジャーナリストの齋藤真(以下「齋藤」という。)の記した「財界展望」の記事を見たり、同人からの説明を聞いて、事実を確認した。

<7> 第一〇回日産青葉会参加者名簿に、原告香川銀行の関連会社である香川興産が含まれている。

(二) 別紙放送文句概要記載の1(2) 及び別紙記事概要記載の一1(2) について

(「原告香川銀行の頭取である原告大林には、同銀行のコンピューターシステムを変更する必要が全くないのにもかかわらず、日本電気から日立製作所に切り替えさせ、これにより、莫大な裏金を手にしたという疑惑がある。」との内容について。以下「コンピューターシステム変更等の疑惑」ともいう。)

<1> 被告らは、平成六年九月一二日、原告香川銀行の管理部長であった浜谷博美(以下「浜谷」という。)から、「以前日本電気のコンピューターを原告香川銀行に導入した際、日本電気が出した三五〇〇万円を自分自身が川井社長(当時)に届けたが、原告大林は当時川井社長の直属の部下で社長の家族の送り迎え等を担当していたことから同社長のやり方を知っている。」と聞いた。

<2> 被告らは、<1>と同じころ、コンピューター業界の人から、原告香川銀行で第三次オンラインシステムを導入するにあたって、ソフトの改良のため多額の資金が必要でありハードシステムを取り替える必要がないうえ、既存のハードシステムを担当した日本電気の社長が変更しないように要請したにもかかわらず、原告大林が日本電気製のコンピューターから日立製作所製のコンピューターに切り替えたと聞いた。

<3> 原告大林は、<2>の切り替えを行う前に、娘婿の兄である訴外武田宏樹を日立製作所から原告香川銀行に引き抜き、システム開発室長に就任させた。

<4> 被告らは、「日本電気関係者が『前代未聞である。システム全体をそっくりそのまま代えてしまうなんて。この業界で長いが、このような経験をしたことがない。提示した金額も当社が低く、互換性の点からも当社がスムーズに移行できる。」といった趣旨の記載のある「財界展望」の記事を見たり、齋藤から「被害者の会に来ていた日立製作所の元社員は、日立製作所が原告大林に現金を持っていったことが当時問題となったと述べた。」と聞いた。

(三) 別紙放送文句概要記載の1(3) 及び別紙記事概要記載の一1(3) について

(「原告香川銀行の頭取である原告大林には、親しい第三者に情報を流し、同銀行の上場時の株式につき、いわゆるインサイダー取引をし、大儲をした、証券取引法違反の疑惑がある。」との内容について。以下「インサイダー取引の疑惑」ともいう。)

<1> 原告大林は、原告香川銀行が一部に上場した時期ころから株式を取得し始めている。

<2> 平成元年の中頃、原告香川銀行の株式が二六九〇万円の最高値をつけた際、原告大林が懇意にしている大西グループが一時的に株式を買い占め、筆頭株主になったことがあったが、大西グループのトップと原告大林は非常に懇意にしていた。

<3> 原告香川銀行が一部上場を果たした二年後、大西グループはほとんどの株式を手放しており、売抜けた感は払拭できない。

<4> 被告らは、平成六年六月以前ころ、松井弘文(以下「松井」という。)から、「原告香川銀行が一部に上場したとき、原告大林が流した情報で、原告香川銀行の株式を一〇パーセントほど所有している大西グループが利益を得た。当時、一株一五〇〇円が約一年後に二七〇〇円になった。」と聞いた。

<5> 被告らは、<4>の内容について捜査機関に確認したところ、データを確認しており真実であるが、時効などが問題で摘発はできないと言われた。

<6> 原告香川銀行は、大西グループのレジャー施設であるレオマワールドの入場券を同行の行員に販売させていた。

(四) 別紙放送文句概要記載の1(4) 及び別紙記事概要記載の一1(4) について

(「原告香川銀行の頭取である原告大林には、同銀行の人事部長時代に地位を悪用して、部下の美人社員に付き合いを強要したという疑惑がある。」との内容について。以下「不倫強要の疑惑」ともいう。)

<1> 被告Aが、松井から不倫強要の疑惑の説明を受けた際、その場に同席していた原告香川銀行の現職行員や元行員からその事実を否定する言動はなかった。

<2> 被告らは、平成六年六月ころ、原告香川銀行の行員ら二、三名に取材したところ、「原告大林は、人事部長時代、印刷屋の社長の娘で、東京の短期大学を卒業した女性の入行面接を行い、人事部の意見により人事課に配属された同女と肉体関係を持つようになった。その後、原告大林は、同女が住友金属に勤務する男性と見合い結婚することになり、関係の解消を求めたのに対し、結婚するとばらすなどと言って不倫関係の継続を求めたため、同女が相談した上司が間に入り、両者の関係を解消し、同女は結婚して九州へ行った。原告大林は、人事部長から岡山支店長となって岡山勤務となった際、同女が神戸に転勤していたことを知ると、神戸に行き、同女を呼びだして再度肉体関係を強要してその関係を継続させた。同女は妊娠したが、夫の子か原告大林の子かわからない状態であった。同女が再び上司に相談したため、同人の仲介により、両者の関係は最終的に解消した。」ということを確認した。

<3> 被告Aは、平成六年六月三日、当時原告大林の部下であった小川和彦(以下「小川」という。)と面会し、原告大林の女性関係を尋ねるや、小川は「いやあ。」という曖昧な返事をした。

<4> 被告Aは、平成六年七月七日、再び小川と面会した際、小川が「原告大林と小川の二人で頭取室に入ったときに原告大林が自分でカギを締めた。」、「原告大林と小川の仲が怪しいので、原告大林の子分ではないかと他の行員に言われた。」と言い、原告大林と小川が親密な関係にあることを聞いた。

<5> 被告Aが、<4>の際、小川に対して原告大林の女性関係について質問したところ、小川が「若気の至りということで…と。」と言って暗に見逃してほしいとの態度を示し、小川か同席していた圖子武(以下「圖子」という。)が、「若いときには私もありますわ。今の年になればそんなことはないわな。」と話した。

<6> 被告Aは、平成九年から一〇年の初めころ、偶然に小川と会った際、他の仲間を先に行かせて一人になった小川が被告Aに対してウィンクをしながら両手を合わせて「お手柔らかに頼む。」と拝むのを見て、原告大林が追いつめられている状態にあると思った。

(五) 別紙記事概要記載の一1(5) について(「平成九年一一月二九日被告A宅に四発の銃弾が打ち込まれた事件につき、原告大林側に殺人依頼の疑いがある。」との内容について。以下「殺人依頼の疑惑」ともいう。)

<1> 被告らが、平成六年九月五日付け四国タイムズに別紙記事概要記載の一1(4) の記事を掲載して以来、同記事を掲載して原告大林に選挙管理委員長の辞職を求める活動を行い、その回数も多数回に及んだ。

<2> 被告らは、平成六年五、六月ころ、原告香川銀行の取引先である圖子から、金銭の支払いを条件に別紙記事概要の内容を記事にしないように申し込まれたが、これを拒否した。

<3> 被告らは、平成六年、原告大林の代理人弁護士から、被告Aを告訴する旨の申入れを受けたが、その後、平成一〇年の告訴に至るまで告訴がなかった。

<4> 被告らは、平成六年九月三日あるいは四日、原告両名が依頼している植村税理士から、「香川銀行の小川さんが困って古瀬さん経由で金で記事を押さえてくれんだろうか。」と金銭の支払いを条件に活動を行わないように申入れを受け、これを拒否した。

<5> 被告らは、平成九年九月ころから、軽ワゴンで、原告香川銀行や原告大林宅付近で、別紙放送文言の街宣活動を開始し、その回数も多数回に及んだ。

<6> 被告Aは、<1>及び<5>における活動の期間中、原告大林が香川県選挙管理委員長としてふさわしくないとして、議会や知事部局にも抗議に行っている。

<7> 被告らは、平成六年一〇月ころ、ある暴力団から「活動をやめろ。身が危ない。」との被告Aに対する脅迫があったことを松井から聞いた。

<8> 被告Aは、平成六年一二月一七日、若林組副長近道組の六車から「若林親分が、四国タイムズを廃刊にしろ、指を詰めろ、命をとれとしつこく迫ってきて困っている。」と聞いた。同月二〇日、近藤親分は、被告Aに対し、「若林親分に、廃刊にしろ、指を詰めろ、やれと言われて困っている。」等を話していた。

<9> 被告らは、平成九年一〇月ころ、モトダという暴力団から「原告大林の甥に頼まれた。記事や街宣活動を中止して欲しい。お金を出す。」などと言って活動中止の申入れを受けたが、これを拒否した。

<10> 平成一〇年八月には、香川県の知事選挙が予定されていたところ、被告らは、平成九年一一月二六日、原告大林の香川県選挙管理委員長の解職請求代表者証明書の交付申請をした。

<11> 原告大林は、平成九年一一月二七日、<10>の証明申請がなされたことを知らされた。

<12> 平成九年一一月二九日、被告A宅に銃弾が四発打ち込まれた。

<13> 被告らは、平成九年一二月ころ、香川県地方課に架電し、右<11>の説明を聞いた。

<14> 原告香川銀行は、若林組長の仲介により、百十四銀行の井坪建設に対する不良債権を肩代わりした。井坪建設が右組長宅の新築工事を請け負ったり、逆に、組長が井坪建設の開発した駐車場システムの販売を手伝うなど、両者は協力関係にあった。

<15> 被告Aは、平成一一年四月一三日、若林組舎弟広沢から「デタラメを書きやがって。」、「香川銀行は関係ない。」、「香川銀行をたたくのはやめろ。」などと脅迫を受けたため、同人を告訴したところ、同人は起訴された。

<16> 新聞「新生」の内容からも明らかなように、被告Aは、若林組長の企業舎弟である安西から攻撃を受けることが予想されていたが、現実に安西から攻撃を受け、安西に対し現在損害賠償の裁判を行っている。

<17> 前記(一)ないし(四)の事実は真実であり、被告らは、(一)ないし(四)でみたとおり、真実であると信じ、そのように信じることについて合理的な理由がある。

(原告両名の主張)

(一) 本件内容は公共の利害に関する事実とはいえない。

(二) 昭和五八年ころに原告香川銀行から融資を断られるなどして不満を抱いていた不動産業者の松井と、同じころ降格処分を受けるなどした浜谷(当時原告香川銀行の行員)が共同して、当時の川井顕作社長やその跡を継いだ原告大林の誹謗中傷を繰り返していたが、被告三名は、これに加担すべく、本件各行為に及んだものである。また、被告Aは、解職請求代表者証明書の交付申請をしたが、その後一切法的手段を取っておらず、平成一〇年四月には、第二地銀協会に出向いたり同協会役員に文書を送るなどして原告大林を誹謗中傷する文書を送っている。これらからすると、本件各行為には公益目的が認められない。

(三) 本件内容はいずれも虚偽であり、真実と信じるについて相当な理由があるとはいえないから、その違法性ないし責任は阻却されない。

4  被告三名の責任並びに原告両名の損害の程度及びその回復方法

(原告両名の主張)

(一) 被告Aは、被告四国タイムズ及び被告推進会の代表者であり、相通じて、本件各行為に及んだものであるから、連帯して、金銭賠償及び謝罪広告を行うべきである。

(二) 本件街宣行為の差止めの範囲は半径二〇〇〇メートルとする必要がある。

(三) 毀損された原告両名の名誉等の社会的評価を金銭による賠償で償い得ないから、その評価を回復させるには、謝罪広告が必要である。

(被告三名の主張)

(一) 仮に、被告三名に責任があるとしても、被告推進会については本件街宣行為の責任のみを負うべきであり、また、被告四国タイムズ社については本件記事掲載行為についての責任のみ負うべきである。

(二) 仮に、本件各行為に違法性が認められるとしても、その程度は低いから、慰藉料については著しく軽減されるべきである。

(三) 仮に、本件街宣行為の差止めが認められるとしても、半径二〇〇〇メートルの範囲で制限するのは表現の自由を不当に制限するもので過大な制限というべきである。

(四) 仮に、謝罪広告が認められるとしても、記事を掲載した媒体である被告四国タイムズ社において行わせるのが公平の原則に合致するというべきである。

第三争点に対する判断

一  本件各行為は、被告三名が、原告大林の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に職務を行い日常生活を営む権利を、原告香川銀行の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に業務を営む権利を毀損するか(争点1について)。

1  本件内容は、原告大林の社会的評価を低下させる内容であると解されるから、これを街頭宣伝車により放送する行為は、同原告の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に職務を行い日常生活を営む権利を毀損し、右内容の記事を掲載する行為は同原告の名誉・信用を保持する権利を毀損すると認められる。

2  会社の役員の名誉・信用毀損行為が直ちに会社の名誉・信用毀損行為となるわけではなく、会社の業務執行方法に対する内容を包含している場合に限り、同時に会社に対する名誉・信用毀損行為にもあたると解するのが相当である。

これを本件についてみるに、本件内容は、原告大林を疑惑の対象者として名誉毀損行為等に及ぶものであるが、「銀行法違反の疑惑」、「コンピューターシステム変更等の疑惑」については、会社の業務執行方法に対する内容を包含しているから、その限度で、右内容は原告香川銀行の名誉・信用を害するもので、別紙放送文句概要記載の1(1) (2) 及び2を一体として街頭宣伝車により放送する行為は、同原告の名誉・信用を保持する権利、平穏かつ安全に業務を営む権利を毀損し、別紙記事概要記載の一1(1) (2) 、2及び二の内容の記事を掲載する行為は同原告の名誉・信用を保持する権利を毀損すると認められる。

3  被告三名は、四国タイムズは特定の購入先に配布するものであり、日刊紙のように一般人が自由に入手し得るものではないうえ、発行部数も一万部と少ないから、社会への流布の可能性は少なく違法性がないと主張する。

しかし、本件記事掲載行為は、「不特定多数」の者に伝播する形で原告大林の名誉・信用を毀損し、同記載の一1(1) (2) 、2及び二の記事は、原告香川銀行の名誉・信用を毀損しているから、不法行為が成立し違法性は阻却されないというべきである。被告三名の主張する要素は違法性の程度として考慮されるべき問題であって、右主張は到底採用できない。

4  また、被告三名は、本件街宣行為についても、軽ワゴン上からバックミュージックを流すと共にさほど大きくない音で放送を行うだけであり、街宣車というより広報車というべきであるうえ、時折、別紙放送文句概要記載の内容を放送するにすぎず、大半は選挙管理委員会委員長を辞めてもらおうという内容の放送だけであり、このような表現方法は社会的に許容された相当な範囲の行為であると主張する。

しかし、別紙放送文句概要記載の放送文句は、原告大林の名誉・信用を毀損し、同記載の1(1) (2) 及び2の放送文句は、原告香川銀行の名誉・信用を毀損する行為であり、右各内容を原告大林宅付近及び原告香川銀行本店付近で放送することは、原告両名の右名誉・信用を害するものであるとともに、原告大林宅付近における街宣活動においては原告大林の平穏かつ安全に日常生活を営む権利を侵害するものであり、原告香川銀行本店付近における街宣活動においては、原告両名の平穏かつ安全に職務を行う権利を侵害するものであって、社会的に許容された相当な範囲の行為とはいえないというべきである。

5  以上によれば、本件各行為は、被告三名に違法性や責任を阻却する事情が認められない限り、被告三名には不法行為が成立するというべきである。

二  前提事実2以外の被告三名の本件内容の記事掲載行為の有無(争点2について)

原告両名が主張する記事について、別紙記事概要記載の記事内容に直接当たるとはいえないとしても、右記事内容に包含される内容であり、かつ、原告両名の名誉・信用を保持する権利を毀損するものであれば、不法行為が成立するというべきである。

1  平成六年九月五日付号

(一) 被告三名は、「コンピューターシステム変更等の疑惑」の記載があるといえるか評価に争いがあると主張する。しかし、同紙面には、「頭取の座をかちとった大林氏は、川井前社長と同じように、銀行内を大林一族で固め始めた。」、「武田宏樹氏を日立から香川銀行に入行させ、システム部長として、銀行内のコンピューターをNECからすべて日立に代えさせた。そのバックマージンを手にしたと思われる大林頭取は、かなりの自社株を購入したという。現在、大林頭取は十一万株を所有している。」と記載されており、まさに「コンピューターシステム変更等の疑惑」の内容を示したものというべきである。

(二) また、被告三名は、別紙記事概要の一2の記載があるといえるか評価に争いがあると主張する。しかし、同紙面には、右(2) の内容に続いて、当事者間に争いのない「不倫強要の疑惑」が掲載され、その後に、「香川銀行頭取が県選管委員長」という見出しがつけられて、「大林頭取は、香川県選挙管理委員長という公的重要なポストについている。川井前社長も、県選挙管委員長であったから、県や選管委員会は、人格なども考えずに世襲のごとく香川銀行頭取を選管委員長にすえるのだろうか。」、「不倫に汚れて人格的に非難される大林頭取を県選管委員長にしておくのはいかがなものであろうか。」との記載がなされており、以上を併せれば、別紙記事概要の一2の記載があるというべきである。

2  平成六年一〇月五日付号

(一) 被告三名は、「コンピューターシステム変更等の疑惑」の記載を争うが、同紙面には、「1香川銀行が独断で、コンピューターをNECから日立にかえさせた。2そのバックマージンとして金銭を受け取った。3その金額で香川銀行の株式を購入し、現在十一万八千株を所有している。と書かれてあるのは全く事実に反する。」との原告大林の代理人からの抗議文や右1ないし3に対する反論内容を掲載したうえで、「本社は十分に検討して次のように結論づけた。コンピューターの変更は、頭取の鶴の一声で決まったことである。討議や機関決定というのは形式にすぎない。大林頭取は『香川銀行の天皇』と言われるほど強い力を持っているようだ。」、「株の購入や所有は本人だけでなく、親族や知人の名前を借るなどのいろいろな方法も考えられるので、素直に信じることができない。」と掲載されており、右疑惑が掲載されていることは明らかである。

(二) 同紙面には、原告大林が右のとおり株式を所有しているほかに他人名義で取得している可能性も否定できず、原告代理人の説明を直ちに信じることができないという内容となっているが、それ以上の記載は見あたらないから、「インサイダー取引の疑惑」についての記載はないというべきである。

(三) 被告三名は、「不倫強要の疑惑」の記載がないと主張する。同紙面には、「『本紙九月五日号のトップに香川銀行は金融界の伏魔殿か』と特大見出しで報道したところ、さまざまな波紋が県内全域に広がった。」から始まり、(香川銀行の植原総務部次長が)「頭取の女性問題についても『あれは単なるうわさでしょう。それをあたかも事実のように書かれて残念です。』と、とぼけた。」「頭取の女性問題については、古い社員ならだれでも知っている有名な話。」と記載されている。右記載は、原告大林が以前に何らかの女性問題を起こしたとする内容であること、これまで継続して四国タイムズを購読している読者にはその意味が容易に理解できることなどからすると、「不倫強要の疑惑」自体に当たるとはいえないが、右記事内容に包含される内容であり、右限度で、原告大林の名誉・信用を保持する権利を毀損する内容であるというべきである。

3  平成六年一一月五日付号

被告三名は、「インサイダー取引の疑惑」の記載がないと主張する。同紙面には、「香川銀行のもみ消し作戦」との大見出しの下に、「この記事が出たら、たいへん『財界展望』を買い占め』」という小見出しが掲載されたうえ、「香川銀行広報部長代理尾方志郎氏は、『頭取名議(まま)の当行株が十一万八千株式会社もあると言うのですか。それは、何かの間違いではありませんか。当行関係者による当行株保有については、全て持株会での保有となるのですが……。もちろん、頭取であろうと、それは同じです。従って、頭取名義の株式などあるはずがありません。もし、そのようなことがあれば、それはインサイダー取引にもなってしまいますよ』と語っている。」と記載され、株主名簿に原告大林の名前、住所、株式数一一万八〇〇〇株と記載されていることが紹介されている。右記載は、原告大林がインサイダー取引を行って、自己名義の株式を取得したとする趣旨の内容であり、「インサイダー取引の疑惑」の要素である「第三者に情報を流し、原告香川銀行の一部上場時に行った」とする内容の記載がないが、右疑惑に包含される内容であり、右限度で、原告大林の名誉・信用を保持する権利を毀損する内容であるというべきである。

4  平成七年六月五日付号

被告三名は、「コンピューターシステム変更等の疑惑」、「インサイダー取引の疑惑」の記載があるといえるか評価に争いがあると主張するところ、証拠(甲八の8)によれば、右記載は認められない。

5  平成七年一〇月五日付号、平成九年六月五日付号

被告三名は、それぞれ別紙記事概要記載の一2の記載がないと主張する。たしかに、同紙面上には、別紙記事概要記載の二の記事は認められるが、別紙記事概要記載の一2の記載自体はないというほかない。

6  平成九年七月五日付号

(一) 被告三名は、「コンピューターシステム変更等の疑惑」がないと主張する。同紙面には、当事者間に争いのない「銀行法違反の疑惑」が掲載されたうえ、「日立製作所と香川銀行はどうか。この両者にも、実は大変な関係性があるのだ。それは、香川銀行における第三次オンラインシステムにある。この点については、次号に詳細を記すことにするが、この部分が、香川銀行のトップの在り方が問われるほどの重大な意味を持っていることだけは記しておこう。」と掲載されている。「銀行法違反の疑惑」が原告香川銀行の問題としても掲載されており、記事の近辺に原告大林の写真が掲載されていることからすると、前記掲載内容が第三次オンラインシステムについて何らかの不正があったとの趣旨に解しうるが、具体的な内容がないため、「コンピューターシステム変更等の疑惑」の概要を示しているとまではいえない。

(二) 被告三名は、別紙記事概要記載の一2の記載がないと主張するところ、同紙面上には、別紙記事概要記載の一2の記載自体はない。

7  平成九年八月五日付号

(一) 被告三名は、「コンピューターシステム変更等の疑惑」の記載があるといえるか評価に争いがあると主張する。同紙面には、「香川銀行は第三次オンラインにおいてそれまで続いていた日本電気との契約を一切白紙に戻し、日立製作所に全ての契約を切り替えた。」「何故、日立製作所なのか。実は大林頭取の親族が、当時、日立製作所に在籍しており、その親族との関係から日立製作所に第三次オンラインの契約を移行したのである。その親族は、その後、香川銀行に移り、要職に就いている。この問題は、当時、大林頭取の銀行私物化疑惑として喧伝された。」と記載されており、「コンピューターシステム変更等の疑惑」のうち、原告大林がコンピューターシステム変更により裏金を手にしたとする記載はないが、他の記載は概ね認められるから、その内包する限度で、原告両名の名誉・信用を保持する権利を毀損する内容であるというべきである。

(二) 被告三名は、別紙記事概要記載の一2の記載がないと主張する。しかし、同紙面には、当事者間に争いのない「銀行法違反の疑惑」及び右(1) の内容が掲載されたうえ、続けて「大林頭取は、長きに渡って、香川県の選管委員長を務めている。一銀行の頭取として、これだけ私物化の要素を指摘される人物が選管委員長を務めているのだ。」、「あえて、本稿の最後に記すとする。『大林頭取に選管委員長を辞めてもらいましょう。』!」と記載されており、別紙記事概要記載の一2の内容が記載されていることは明らかである。

8  平成九年九月五日付号

被告三名は、別紙記事概要記載の一2の記載があるといえるか評価に争いがあると主張するが、同紙面には、当事者間に争いのない「銀行法違反の疑惑」、「コンピューターシステム変更等の疑惑」、「インサイダー取引の疑惑」、「不倫強要疑惑」が掲載されたうえ、その後に続けて、「いま、なぜ、県選挙管理委員長か」という見出しがつけられ、「現在、大林頭取は県選管委員長。しかも、昨年三月、平井知事の提案によって県議会が承認し、再任された。おかしいではないか。真っ黒な疑惑に包まれた人物が明るい、正しい選挙の元締めとして座っているのは、どうしても納得できない。」と記載されており、別紙記事概要記載の一2の内容が記載されていることは明らかである。

9  平成九年一一月五日付号

(一) 被告三名は、「銀行法違反の疑惑」の記載がないと主張するが、同紙面には、「日産生命保険被害者の会は、『香川銀行は、日産生命の保険に加入するように勧誘し、ローンまで組ませた』と言い切っている。」とし、被害者の会の数人に取材した内容として「香川銀行の口ぐるまに乗せられて保険に加入しました。香川銀行を信用していたのです。」などと記載され、さらに「銀行が保険の勧誘をすることは、法律によって禁止されているので、香川銀行は明らかに違反している。大林頭取の指示によって勧誘したのではないか。」と記載されており、「銀行法違反の疑惑」の内容が記載されていることは明らかである。

(二) 被告三名は、別紙記事概要記載の一2の記載がないと主張するが、同紙面には、当事者間に争いのない「コンピューターシステム変更等の疑惑」、「インサイダー取引の疑惑」が掲載され、その後に「大林頭取は、頭取と、県選管委員長の職を辞任すべきであると信じて四国タイムズは追及している。」と記載されており、明らかに認められる。

10  なお、原告両名は、別紙記事概要記載の二の記事について、平成六年九月五日付号、同年一〇月五日付号、同年一一月五日付号、平成七年一月五日付号、同年九月五日付号にも記載があると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

三  被告三名の本件各行為について、違法性、故意過失が阻却されるか(争点3について)。

本件各行為が原告両名の名誉・信用を毀損すると認められる場合であっても、<1>その内容が公共の利害に関する事実に関わり、かつ、<2>その目的が専ら公益目的を図るものである場合には、<3>その内容の重要な部分が真実であるとの証明がなされれば、被告三名の右行為は違法性を欠き、また、<4>その内容が真実であることの証明がなくとも、被告三名がそれを真実であると信じたことについて相当の理由があるときは、故意過失を欠き、いずれの場合にも不法行為が成立しないものと解するのが相当である。以上の要件について以下順次検討する。

1  公共の利害に関するか否か(<1>について)

公共の利害に関するか否かについては、摘示された事実自体の内容、性質に照らして客観的に判断されるべきものであるところ、本件内容は、原告大林の公正性、潔癖性を批判して選挙管理委員長としての不適格性を指摘するにあたり、その例として挙げられたものであることがその内容自体から明白であるから、本件内容は公共の利害に関する事実に該当するというべきである。

2  公益目的を有するか(<2>について)

(一) 1でみたとおり、本件内容は、原告大林を選挙管理委員長としての不適格性を指摘し、その辞任を求めるものである。そして、証拠(乙一四、一八、二〇、被告A本人)によれば、被告Aが被告四国タイムズ社を始めたそもそもの動機は公的な立場の人に絞り捜査関係でも入れないような者を報道でいぶしながら追いつめていくことであること、被告推進会もほぼ同様の趣旨であること、被告三名が、街宣活動を始めたのは、平成一〇年になれば衆議院選挙、同年八月には香川県知事選挙があるので、平成九年のうちに原告大林に選挙管理委員長を退いてほしいと考えたからであることが認められる。

(二) これに対し、原告両名は、昭和五八年ころに原告香川銀行から融資を断られるなどして不満を抱いていた松井と、同じころ降格処分を受けるなどした浜谷(当時原告香川銀行の行員)が共同して、当時の川井顕作社長やその跡を継いだ原告大林の誹謗中傷を繰り返していたが、被告三名は、これに加担すべく、本件各行為に及んだものであり、また、被告Aは、解職請求代表者証明書の交付申請をしたが、その後一切法的手段を取っておらず、平成一〇年四月には、第二地銀協会に出向いたり同協会役員に文書を送るなどして原告大林を誹謗中傷する文書を送っているのであって、以上の事実からすると、本件各行為には公益目的が認められないと主張する。

たしかに、証拠(乙一三、被告A本人)によれば、右事実が認められる。

しかし、本件内容が真実であるか、被告三名がその内容を真実であると信じたことについて相当の理由があると認められるならば、原告両名の指摘する右事実が認められるとしても、直ちに公益目的がないとはいえないのであって、前記(一)の事情と併せ考慮すれば、本件各行為が専ら公益目的に出たものではないとまではいえないというべきである。

(三) そこでさらに検討するに、証拠(甲一五、乙一八、被告A本人)によれば、被告Aは、圖子から二〇〇万円を受領したことが認められるが、圖子が、被告Aが名誉毀損として起訴された刑事裁判の法廷で「平成六年七月ころ、原告大林に関する記事を掲載することに関して被告Aと会った際、何も言わずに被告Aに二〇〇万円を手渡したところ、同人は内ポケットに収めた。被告Aが主催する財団法人日本武道振興会(以下「日本武道振興会」という。)への寄付とは一切考えていない。もし寄付であるならば日本武道振興会の領収証を送ってくるはずである。」旨証言していること(乙一九)、圖子が日本武道振興会のために寄付をしたのはこの二〇〇万円以外にないこと(被告A本人)などからすると、右受領の趣旨が日本武道振興会での活動に対する支援という趣旨であるとする被告Aの供述は信用できず、被告Aは、記事の差止に関連して二〇〇万円を受領したというほかない。そして、被告Aは、原告大林及び原告香川銀行に四国タイムズの購読料を請求したことのあることが認められる(乙一八)。

以上からすると、被告Aは、金銭目的で本件各行為を行ったのではないかとも解し得るところである。

(四) しかし、本件各行為について被告Aが専ら公益目的を有していたと認められるか否かについては、本件内容の真実性の有無・程度も総合考慮して判断すべきである。

3  本件内容につき真実性の証明があるか、その証明がないとして、真実であると信じたことについて相当の理由があるとの証明があるか(三冒頭の<3><4>について)。

(一) 「銀行法違反の疑惑」について

(1)  証拠(甲一九、証人黒田勝之、同齋藤真)によれば、以下の事実が認められる。

原告香川銀行は、日産生命が一括前納払いの商品である積立年金保険を発売するにあたり、昭和六二年一〇月一六日、日産生命と提携して保険料をローンで貸し付けることとし、香川年金ローン(以下「本件ローン」という。)を発売することを常務会で決定した。原告香川銀行は、本件ローンの発売に際し、行員に対し、地域ごとの周知会等で、行員は本件ローンの勧誘だけを行い、保険自体の取扱いを行ってはならないこと(保険契約の募集は日産生命の募集代理店である香川興産が行うこと)を徹底する研修を行った。なお、香川興産は原告香川銀行の一〇〇パーセント出資の子会社である。

(2) (ア) 被告三名は、真実性及び信じたことの相当性の立証として、<1>原告大林は、役員会において、銀行法一二条に違反する、日産生命の保険販売を扱うと提案し、反対があったにもかかわらずこれを強行した旨、被告らは、役員会に出席して反対した人の話を聞いた人から、情報を確認したと主張する。

たしかに、右主張に沿う証拠(乙二〇、被告A本人)があるが、誰から聞いたのか不明であり、右証拠は直ちに採用できない。

(イ) <2>被告らは、平成八年ころ、原告香川銀行の元行員の女性から、原告香川銀行に自己の定期預金の扱いをまかせてほしいと言われた後、知らないうちに日産生命に加入させられていた、<3>被告らは、原告香川銀行の取引先の社長から、原告香川銀行の行員が「ローンを組んで日産生命に入って下さい。」と述べ、支店長も一緒に加入を求めたということを聞いた、<4>被告らは、<3>とは異なる原告香川銀行の取引先の社長から、保険の勧誘の際、日産生命の社員も香川興産の社員も来ず、原告香川銀行の行員だけが来たということを聞いたと主張する。

たしかに、主張に沿う証拠(乙二〇、被告A本人)があるが、<2>ないし<4>の事実につき、いずれも保険の勧誘をした行員及び勧誘された者が明らかでなく、その真実性は到底証明できたとはいえない。

この点につき、被告Aは、元行員の名前は原告香川銀行から仕返しがあるといけないので言えない、会社社長の会社名についても原告香川銀行の現在の体制が変わるまでは言えないと供述している。

しかし、名誉を毀損した者が、その取材源について明らかにすることなく、真実であると信じたことについて相当の理由があることの立証責任を免れ得るとすることは、名誉を毀損された者の反証の機会を奪うことになって許されないと解される。

(ウ) また、被告三名は、<5>日産生命が破綻した後の平成九年七月三〇日、被害者の会が開催されたが、原告香川銀行の勧誘による被害者の数が全国一六三行中最大で、二位の倍以上であり、被害者の中には警察官、弁護士、検察官がいたと主張する。

よって、検討するに、証拠(甲一九、二三、乙五の1、二〇、二八、二九、証人黒田勝之)によれば、右<5>の事実のうち、日産生命が破綻した後の平成九年七月三〇日、被害者の会が開催されたが、原告香川銀行関係の被害者が多数いたこと、本件ローンの契約者の一部が被害者の会を結成して、原告香川銀行に赴いて説明を求めたり、銀行員が保険の勧誘としたなどの理由から原告香川銀行に対して被害額の返還を求める民事調停や訴訟を提起したりしていることが認められる。

しかし、右認定を超える事実を認めるに足る証拠はない。また、証拠(甲二四)によれば、原告香川銀行は右訴訟において勧誘行為を明確に否定し、争っていることが認められる(なお、証人黒田は、原告香川銀行の行員だけで客のところへ行く場合があるが、その場合、保険契約の中身の説明をするわけにはいかないので、一応香川興産に連絡する旨証言する。)。

右認定事実によれば、原告大林が、原告香川銀行の行員に命じて、同行の顧客に対し、銀行法一二条に違反する保険契約を加入させたことには到底ならない。なお、右の認定・判断は、右の民事調停や訴訟において、個々の保険契約につき、原告香川銀行の行員による保険契約の勧誘行為の有無を判断しているものではないことはいうまでもない。

(エ) さらに、被告三名は、<6>被告Aが、日産生命の被害者の会に出席した齋藤の記した「財界展望」の記事を見たり、同人からの説明を聞いて、事実を確認したと主張する。

しかし、証拠(乙六の2)によれば、「財界展望」には、「香川銀行の関係会社といわれる香川興産が日産生命の保険を販売しており、そこから銀行との関係が取り沙汰されたり」との記載があるにすぎないこと、証人齋藤は、日産生命の破綻した平成九年五月の連休の一週間後くらいには日産生命の問題の情報が入り、日産生命の元行員、日産生命の関係者、代理店、加入者、香川興産の関係者に取材をしたと証言するが、具体的な氏名については不明であるうえ、齋藤自身の認識するところでも、原告香川銀行の行員が保険を販売する者と同道してローンを組み、この保険は間違いないと言って保険を勧めているので、勧誘行為だと考えているというに過ぎないことが認められる。

(オ) 被告三名は、<7>第一〇回日産青葉会参加者名簿に、原告香川銀行の関連会社である香川興産が含まれていると主張する。しかしながら、香川興産は原告香川銀行の一〇〇パーセント出資の子会社であるとはいえ、別法人であり、香川興産の社員が保険を勧誘することは何ら問題はないから、右主張は理由がない。

(3)  以上にみた諸事情を総合すれば、原告大林が、原告香川銀行の行員に命じて、同行の顧客に対し、銀行法一二条に違反する保険契約を加入させた事実及びその疑惑はその証明があったとはいえないし、被告三名に右事実を信じるに足る相当の理由もあったとはいえない。

(二) 「コンピューターシステム変更等の疑惑」について

(1)  証拠(甲一九、乙七、証人黒田勝之)によれば、以下の事実が認められる。

原告香川銀行では、昭和五一年に、日本電気製の普通預金オンラインシステム(銀行内オンラインシステム・本支店ネットサービス整備中心とするもので、第一次オンラインシステムともいう。)を稼働させて銀行業務のシステム化を進め、昭和五六年には、日本電気製の為替・融資オンラインシステム(銀行間オンラインシステムを中心とするもので、第二次オンラインシステムともいう。)を導入し、総合オンラインシステムを完成させた。そして、原告香川銀行では、金融の自由化に対応するための情報系システムの整備や新業務対応、インフラ整備を目的として第三次オンラインシステムを導入することとし、平成三年一月、同行は、総合情報システムのメーカー選定に当たって、広く意見を聞くことを目的としてシステム推進委員会を設置した。同委員会は、常務取締役管理本部長や各本部の関連各部部長等で構成され、原告大林はこれに含まれていなかった。

右委員会は、平成三年一一月から平成四年一月にかけて複数回にわたってメーカー及び機種の選定を検討した。これまでのオンラインシステムが日本電気製であったため、同じメーカーがよいのではないかという意見もあったが、これまでのシステムが非常に古い設備であり、日本電気が第三次オンラインシステムを構築するとしても完全にやり替える必要があったこともあって、最終的には、稼働後のレンタル料を中心とする経費の安さや長期的な投資コストの抑制、バンキングシステムの稼働実績等を主たる要因として、第三次オンラインシステムの日立製作所からの導入が有利との結論に達した。そして、平成四年二月二五日開催の常務会で右結論を決定した。なお、新営業店のシステムについては日本電気の端末機が採用されている。

以上の事実が認められるが、右認定の事実を超えて、コンピューターシステムを変更する必要が全くなかったことや、原告大林が莫大な裏金を手にしたと認めるに足る証拠はない。

(2)  これに対し、被告三名は、<1>被告らは、平成六年九月一二日、原告香川銀行の管理部長であった浜谷から、「以前日本電気のコンピューターを原告香川銀行に導入した際、日本電気が出した三五〇〇万円を自分自身が川井社長(当時)に届けたが、原告大林は当時川井社長の直属の部下で社長の家族の送り迎え等を担当していたことから同社長のやり方を知っている。」と聞いた、<2>被告らは、<1>と同じころ、コンピューター業界の人から、原告香川銀行で第三次オンラインシステムを導入するにあたって、ソフトの改良のため多額の資金が必要でありハードシステムを取り替える必要がないうえ、既存のハードシステムを担当した日本電気の社長が変更しないように要請したにもかかわらず、原告大林が日本電気製のコンピューターから日立製作所製のコンピューターに切り替えたと聞いた、<3>原告大林は、<2>の切り替えを行う前に、娘婿の兄である訴外武田宏樹を日立製作所から原告香川銀行に引き抜き、システム開発室長に就任させた、<4>被告らは、「日本電気関係者が『前代未聞である。システム全体をそっくりそのまま代えてしまうなんて。この業界で長いが、このような経験をしたことがない。提示した金額も当社が低く、互換性の点からも当社がスムーズに移行できる。」といった趣旨の記載のある「財界展望」の記事を見たり、齋藤から「被害者の会に来ていた日立製作所の元社員は、日立製作所が原告大林に現金を持っていったことが当時問題となったと述べた。」と聞いたと主張する。

たしかに、右<1>ないし<4>の主張に沿う証拠(乙六の1、二〇、被告A本人)がある。

しかし、<1>については、被告A自身、浜谷が当時の原告香川銀行の社長と対立して、刷新運動と称して行動を起こしていたことを認めるとおり、対立する者の供述であって、その内容自体直ちに信用できないうえ、被告Aは、原告大林が裏金をもらったという話は、浜谷の推測であり、原告大林の性格から言えば当然であるなどと供述しているに過ぎず、客観的具体的な証拠といえない。

<2>については、被告Aは、その取材源であるコンピューター関係の同業者の名前や会社名を言えないし、また他の取材源として被告Aが挙げる銀行のOBの名前についても言えないと供述している(被告A本人)ので、客観的具体的な証拠といえず、<2>に沿う右証拠は採用できない。

<3>については、たしかに、証拠(甲一九、証人黒田勝之)によれば、原告大林の娘婿の兄である武田宏樹が、平成元年九月一日付けで、原告香川銀行に入行し、前記次期システム推進委員会に参加していたことが認められる。しかしながら、右認定事実だけでは、コンピューターシステム変更等の疑惑を裏付ける事実とはなり得ない。

<4>にいう財界展望の記事内容については、右(1) 掲記の証拠に照らし、にわかに採用できない。この点につき、証人齋藤は、「平成六年八月、東京の都銀関係者から第三次オンラインシステムの機種を切り替えた話を聞いたことがきっかけであり、裏取りをしたのは高松市内のさる会社であるが、日本電気と日立製作所の関係者からリベートが渡ったことを聞いている。これらの事実について被告Aに説明した。」と証言するが、一方で、財界展望を執筆した際には、「具体的な金額の裏が取れなかったので記事にしなかった。」、「原告香川銀行に取材したところ、純粋に日立製作所の使い勝手がいいということで切り替えたとの説明があった。」とも証言しており、日立製作所の社員の名前については言えないと明言するなど取材源についても明らかにしていないので、右の齊藤証言は採用できない。

(3)  右(1) (2) の認定事実等によれば、コンピューターシステムの変更等の疑惑を認めるに足りないし、また、「コンピューターシステムの変更等の疑惑」があると被告三名が信じたことについて相当の理由があることの立証がなされたとは到底いえないというべきである。

(三) 「インサイダー取引の疑惑」について

(1)  証拠(甲一九、証人黒田勝之)、弁論の全趣旨及び顕著な事実によれば、以下の事実が認められる。

原告香川銀行は、昭和六三年一〇月二五日、東証二部、大証二部上場をなし、その後、平成三年九月、東証一部、大証一部に指定替えになり、その株価のピーク時は、平成元年一〇月二四日頃で、二六九〇円までに達した。

大西グループは、日本ゴルフ振興株式会社、レジャー振興株式会社、大西土木興業株式会社から成る。日本ゴルフ振興株式会社は、平成元年三月二八日から同年九月二九日までの間に(右期間における原告香川銀行の株価は最高値で一六七〇円、最安値で一三三〇円。)、原告香川銀行の株式を合計四〇九万九〇〇〇株取得し、その後、無償交付により二〇万四九五〇株を取得したうえ、平成五年三月二五日から平成六年三月二二日までの間に(右期間における原告香川銀行の株価は最高値一四〇〇円、最安値一〇〇〇円。なお、平成五年五月二〇日に、一株につき〇・〇五株の株式分割が行われている。)、取得株式の大半である計四四一万四〇〇〇株を売却した。

レジャー振興株式会社は、平成二年三月三〇日(右日における原告香川銀行の株価は最高値二二〇〇円、最安値二一五〇円)、原告香川銀行の株式を一四五万四〇〇〇株取得し、その後、無償交付により七万二七〇〇株を取得したうえ、平成五年五月七日から平成六年九月三〇日の間に(右期間における原告香川銀行の株価は最高値一四〇〇円、最安値一〇〇〇円)、取得株式の大半である計一二一万株の株式を売却した。

大西土木興業株式会社は、平成二年三月三〇日、一二六万七〇〇〇株を取得し、その後、無償交付により六万三三五〇株を取得した等したが、平成五年三月二九日から平成六年九月三〇日の間に、取得株式の大半である計一三七万六〇〇〇株を売却した。

平成元年一〇月二四日ころに原告香川銀行の株価が最高値であったが、その後、株式市場全体の株価が下落し、原告香川銀行の株価も下がっていった。

以上からすると、大西グループは、株式市場の低迷により原告香川銀行の株式の売却を行ったが、これによって多額の損失を出していることが認められる。

(2)  被告三名は、<1>原告大林は、原告香川銀行が一部に上場した時期ころから同行の株式を取得し始めていると主張するが、証拠(証人黒田勝之)によれば、原告大林の右株式は増加しているが、これは役員持株会を通じて購入を継続した結果増加したものであり、役員持株会を離れて個人として右株式を購入していないことが認められる。

(3)  本件のインサイダー取引の疑惑は、原告大林が親しい第三者に対し、役員として知り得た秘密情報を流し、第三者が株式取引によって大儲けをしたことを内容とするものであるが、被告三名は、<2>平成元年の中頃、原告香川銀行の株式が二六九〇万円の最高値をつけた際、原告大林が懇意にしている大西グループが一時的に株式を買い占め、筆頭株主になったことがあった、<3>原告香川銀行が一部上場を果たした二年後、大西グループはほとんどの株式を手放しており、売抜けた感は払拭できない、<4>被告らは、平成六年六月以前ころ、松井から、「原告香川銀行が一部に上場したとき、原告大林が流した情報で、原告香川銀行の株式を一〇パーセントほど所有している大西グループが利益を得た。当時、一株一五〇〇円が約一年後に二七〇〇円になった。」と聞いたと主張し、いずれも大西グループが利益を得たことを内容とするものであって、これに沿う証拠も存する(乙二〇、被告A本人)が、右(1) 掲記の証拠に照らし到底採用できない。

したがって、右<2>ないし<4>の主張は採用できない。

(4)  被告三名は、<5>被告らが、右<4>の内容について捜査機関に確認したところ、データを確認しており真実であるが、時効などが問題で摘発はできないと言われたと主張し、これにそう証拠も存する(乙二〇、被告A本人)が、(1) 掲記の証拠に照らし到底採用できない。

(5)  被告三名は、<6>原告香川銀行は、大西グループのレジャー施設であるレオマワールドの入場券を同行の行員に販売させていたとも主張するが、仮にそうだとしても、本件のインサイダー取引には何らつながるものではない。

(6)  以上を総合すれば、「インサイダー取引の疑惑」は事実に反するというほかなく、これがあると被告三名が信じたことについて相当の理由があることの立証がなされたとはいえない。

(四) 「不倫強要の疑惑」について

(1)  被告三名は、<1>被告Aが、松井から不倫強要の疑惑の説明を受けた際、その場に同席していた原告香川銀行の現職行員や元行員からその事実を否定する言動はなかったと主張し、これに沿う証拠(被告A本人)も存する。しかし、同被告は、右取材源については言えない、相手方の女性に対する取材も、家庭を壊すわけにはいかないという理由で行わなかったと供述していること、不動産業者であった松井についても、前記浜谷の関係者であり、かねてより原告香川銀行と取引があったが、昭和五八年頃、同原告から融資を断られ、果ては競売申立てを受け、強い不満を抱いていた(弁論の全趣旨)ことを考慮すると、右証拠を直ちに採用することはできない。

(2)  また、被告三名は、<2>被告らが、平成六年六月ころ、原告香川銀行の行員ら二、三名に取材したところ、「原告大林は、人事部長時代、印刷屋の社長の娘で、東京の短期大学を卒業した女性の入行面接を行い、人事部の意見により人事課に配属された同女と肉体関係を持つようになった。その後、原告大林は、同女が住友金属に勤務する男性と見合い結婚することになり、関係の解消を求めたのに対し、結婚するとばらすなどと言って不倫関係の継続を求めたため、同女が相談した上司が間に入り、両者の関係を解消し、同女は結婚して九州へ行った。原告大林は、人事部長から岡山支店長となって岡山勤務となった際、同女が神戸に転勤していたことを知ると、神戸に行き、同女を呼びだして再度肉体関係を強要してその関係を継続させた。同女は妊娠したが、夫の子か原告大林の子かわからない状態であった。同女が再び上司に相談したため、同人の仲介により、両者の関係は最終的に解消した。」ということを確認したと主張し、右主張に沿う証拠(被告A本人)も存する。

しかしながら、被告Aは、仲介した上司に対し直接取材をしておらず、右取材源についても言えないと供述していることに照らせば、そのままこれを採用することはできない。

(3)  さらに、被告三名は、<3>被告Aは、平成六年六月三日、当時原告大林の部下であった小川と面会し、原告大林の女性関係を尋ねるや、小川は「いやあ。」という曖昧な返事をした、<4>被告Aは、平成六年七月七日、再び小川と面会した際、小川が「原告大林と小川の二人で頭取室に入ったときに原告大林が自分でカギを締めた。」、「原告大林と小川の仲が怪しいので、原告大林の子分ではないかと他の行員に言われた。」と言い、原告大林と小川が親密な関係にあることを聞いた、<5>被告Aが、<4>の際、小川に対して原告大林の女性関係について質問したところ、小川が「若気の至りということで…と。」と言って暗に見逃してほしいとの態度を示し、小川か同席していた圖子が、「若いときには私もありますわ。今の年になればそんなことはないわな。」と話した、<6>被告Aは、平成九年から一〇年の初めころ、偶然に小川と会った際、他の仲間を先に行かせて一人になった小川が被告らに対してウィンクをしながら両手を合わせて「お手柔らかに頼む。」と拝むのを見て、原告大林が追いつめられている状態にあると思ったと主張し、これに沿う証拠(乙一八、二〇、被告A本人)も存する。

たしかに、右証拠に加え、証拠(乙一七、一九)における原告大林や圖子の供述内容に照らせば、被告Aが小川と二回会って記事の掲載について話し合いをしたことが認められる。

しかし、被告Aは、当初原告大林が不倫を強要した相手は古瀬ビルに住んでいたと供述し(乙一八)、古瀬ビルに住んでいたのは右不倫相手ではなく水商売の女性であり、ここへ原告大林が通っていたのは事実であると供述しながら(被告A本人)、最終的には、原告大林が古瀬ビルに行ったとの供述が誤りであったから撤回する供述をするなどその供述を変遷させていること(被告A本人)からも明らかなように、原告大林が不倫を強要した相手が古瀬ビルに住んでいたとの事実は認められず、したがって、小川がそのような発言をするはずがないにもかかわらず、被告Aは、右<4>ないし<6>の際、原告大林が古瀬ビルで女性と過ごしたことも聞いて確認したなどと供述している(乙二〇)。

また、<6>の内容について、仮にその主張を前提とするとしても、<6>から直ちに、小川が「不倫強要の疑惑」を認めたものであるとはいえない。なお、平成九年から平成一〇年の初めごろといえば、被告三名により本件各行為が行われているときであるから、右中止を婉曲的に求めたものと解することも十分可能である。

(4)  以上の(1) ないし(3) からすると、原告大林による不倫強要の事実及びその疑惑は真実性の証明がなされたとはいえず、被告三名に、真実と信じたことについて相当の理由があるともいえない。

(五) 「殺人依頼の疑惑」について

(1)  被告三名は、<1>被告らが、平成六年九月五日付け四国タイムズに別紙記事概要一1(4) の記事を掲載して以来、同記事を掲載して原告大林に選挙管理委員長の辞職を求める活動を行い、その回数も多数回に及んだ、<2>被告らは、平成六年五、六月ころ、原告香川銀行の取引先である圖子から、金銭の支払いを条件に別紙記事概要の内容を記事にしないように申し込まれたが、これを拒否した、<3>被告らは、平成六年、原告大林の代理人弁護士から、被告Aを告訴する旨の申入れを受けたが、その後、平成一〇年の告訴に至るまで告訴がなかった、<4>被告らは、平成六年九月三日あるいは四日、原告両名が依頼している植村税理士から、「香川銀行の小川さんが困って古瀬さん経由で金で記事を押さえてくれんだろうか。」と金銭の支払いを条件に活動を行わないように申入れを受け、これを拒否した、<5>被告らは、平成九年九月ころから、軽ワゴンで、原告香川銀行や原告大林宅付近で、別紙放送文言の街宣活動を開始し、その回数も多数回に及んだ、<6>被告Aは、<1>及び<5>における活動の期間中、議会や知事部局にも抗議に行っている、<7>被告らは、平成六年一〇月ころ、ある暴力団から「活動をやめろ。身が危ない。」との被告Aに対する脅迫があったことを松井から聞いた、<8>被告Aは、平成六年一二月一七日、若林組副長近道組の六車から「若林親分が、四国タイムズを廃刊にしろ、指を詰めろ、命をとれとしつこく迫ってきて困っている。」と聞いた、<9>被告らは、平成九年一〇月ころ、モトダという暴力団から「原告大林の甥に頼まれた。記事や街宣活動を中止して欲しい。お金を出す。」などと言って活動中止の申入れを受けたが、これを拒否した、<10>平成一〇年八月には、香川県の知事選挙が予定されていたところ、被告らは、平成九年一一月二六日、原告大林の香川県選挙管理委員長の解職請求代表者証明書の交付申請をした、<11>原告大林は、平成九年一一月二七日、<10>の証明申請がなされたことを知らされた、<12>平成九年一一月二九日、被告A宅に銃弾が打ち込まれた、<13>被告らは、平成九年一二月ころ、香川県地方課に架電し、右<11>の説明を聞いた、<14>原告香川銀行は、若林組長の仲介により、百十四銀行の井坪建設に対する不良債権を肩代わりした。井坪建設が右組長宅の新築工事を請け負ったり、逆に、組長が井坪建設の開発した駐車場システムの販売を手伝うなど、両者は協力関係にあった、<15>被告Aは、平成一一年四月一三日、若林組舎弟広沢から「デタラメを書きやがって。」、「香川銀行は関係ない。」、「香川銀行をたたくのはやめろ。」などと脅迫を受けたため、同人を告訴したところ、同人は起訴された、<16>新聞「新生」の内容からも明らかなように、被告Aは、若林組長の企業舎弟である安西から攻撃を受けることが予想されていたが、現実に安西から攻撃を受け、安西に対し現在損害賠償の裁判を行っている、<17>(1) ないし(4) の事実は真実であり、被告らは、(1) ないし(4) でみたとおり、真実であると信じ、そのように信じることについて合理的な理由があると主張する。

たしかに、<12>平成九年一一月二九日、被告Aの自宅が銃撃されたこと、及び<1><3><5><10><11>の事実については弁論の全趣旨により明らかである。

しかし、<17>が認められないことは前述のとおりであり、<1>ないし<16>の事実及び事情は、つまるところ、被告三名の本件各行為により追いつめられた原告大林が選挙管理委員長としての地位を守るために若林組関係者に殺人の依頼をしたとすることの事情とするものであると解されるが、原告大林が暴力団員であるというのなら格別、銀行の頭取の地位にあり、香川県選挙管理委員長を務める者であるから、いずれも原告大林が直ちに殺人を意欲する動機となりえるものではなく、また、原告大林が実行犯に依頼したことを直接示すものではないと認められる。

被告三名も、原告大林自身が実行犯であるとは主張していないところ、被告Aは、実行犯は誰だと感じられるかとの質問に対し、「憶測で構いませんか」としたうえで「近藤親分の関係者であると思う。」と供述し、「近藤組関係者が実行犯であるとすると、その関係者と原告香川銀行の不正融資をした人物が共通してくる。つまり、銀行としては扱えない融資をトップダウン指揮で原告大林が指示しているのである。親分が四国タイムズを読んで困っている原告大林に電話をし、暗黙のうちに共通の問題としてとらえて実行に移した。裏社会では若林は電話マニアであると言われている。」、「原告大林は、実行犯ではなく教唆か幇助犯である。発砲直後に若林の関係であると直感的に考えたが、原告大林が黒幕で関与していると思ったのは発砲後日が経ってからである。直接殺人を頼むというような表現ではなく、困っているかと問われたら困っていると、共通な困りをしてる方であったもんだから、分かったということで実行するんじゃなかろうかと思った。若林が近藤に指示し、近藤が誰かに指示したということで、原告大林の意向が若林に通じたということである。」と供述しており(被告A本人)、結局、実行犯自体が憶測によるものであり、原告大林からの依頼状況について極めて曖昧な内容で、若林が原告大林に電話をした理由についても電話マニアだからなどと結論づけているのであるから、被告Aの右供述を前提とすると、右<1>ないし<16>のうち<1><3><5><10><11>の事実を除く部分についての認定をするまでもなく、原告大林による殺人依頼の疑惑は認められないというべきである。

(2)  なお、証人齋藤は「井坪建設が暴力団と非常に親しい関係にあるところ、この不況の折りに、原告香川銀行が右会社に対する金融機関の不良債権を肩代りしてまでメーンバンクの座を受け継いだ事実を聞いていたこと、ある暴力団直系の金融会社の資料を取り寄せたとき、メーンバンクが原告香川銀行だけであったこと、この二つで基本的に、暴力団と香川銀行が発砲に関してつながるのに十分である。」と証言しているが、右事実から直ちに原告大林の殺人依頼の疑惑が生ずるとは到底解し得ない。

(3)  また、被告三名は、別紙記事概要記載の一1(5) の内容を記事に即して仔細にみれば、「殺人依頼の疑いも」とか「その疑いあるものとして三者あげておこう。」、「一番手に挙げたいのが原告大林である。」、「最後の手段として銃弾を思いついたのではないか。」、「そこまで勘繰りたくなる。」などとして選択的余地を残していると主張するが、いずれにしても原告大林による殺人依頼の疑惑が一番有力であることを示す表現であり、前述のとおり、殺人依頼の疑惑自体が認められないのであるから、不法行為の成立を左右するものではない。

四  被告三名の責任並びに原告両名の損害の程度及びその回復方法(争点4について)。

1  被告三名の責任について

証拠(甲六、八の28(平成九年一一月五日付号)、30(平成一〇年一月五日付号)、乙一〇の1、2、一五)によれば、被告Aは、後部ドアに四国タイムズ広報車と記載された広報車を使用して街宣活動を行い、「こちらは四国夕イムズ広報車でございます。」などと放送したうえ、その旨を四国タイムズ紙に掲載していたことが認められ、さらに、被告A自身も四国タイムズの広報活動の一環として車で放送したことを自認しているのである(乙一八)から、本件街宣行為には被告四国タイムズとしての意思表明が含まれていたことは明らかである。被告Aは被告四国タイムズ社の代表取締役であり、また被告推進会の代表者であるから、民法七〇九条に基づき、本件街宣行為についての責任を負うと解される。

また、前記前提事実1(二)のとおり、被告Aは、被告四国タイムズ社の編集発行人兼執筆者として本件記事掲載行為をしたから、被告A及び被告四国タイムズ社は、民法七〇九条に基づき、本件記事掲載行為について責任を負うと解される。

原告両名は、被告推進会も、本件記事掲載行為の責任を負うと主張するところ、被告推進会が四国タイムズ紙に直接関与しているとの証拠は認められないから、右主張は採用できない。

2  損害賠償請求について

証拠(甲一六、一七、乙一七、証人黒田勝之)によれば、本件街宣活動が原告香川銀行本店前で行われているとき、本社六階に度々VIPが来訪していたが、窓を閉めても外から音がする状態であったこと、社員の研修が中断されたこと、客からも何とかするようにとのクレームが上がったことが認められる。

そして、右事実に加え、すでにみた本件各行為の執拗な回数、街宣活動の形態、別紙記事概要記載の内容が「疑惑」の形式であり、選択的表現も見受けられること、別紙記事概要記載の内容よりも表現が弱いものも存すること、四国タイムズの発行部数及び発行形式、本件内容の核心は原告大林に向けられたものであることなど諸般の事情を総合考慮すると、原告大林が被った権利侵害に対する慰謝料は、被告三名の本件街宣行為につき八〇万円、被告A及び同四国タイムズ社の本件記事掲載行為につき一二〇万円、原告香川銀行が被った権利侵害に対する無形の損害については、被告三名の本件街宣行為につき四〇万円、被告A及び同四国タイムズ社の本件記事掲載行為につき六〇万円を認めるのが相当である。

3  差止請求について

本件街宣活動は新聞記事のように残存するものではない。また、別紙記事概要記載の記事についても四国タイムズの販売形式に照らし、基本的には右の読者だけが一般に目にするものであり、その発行日からかなり年月を経ているものも認められる。

しかし、すでにみたとおり、本件各行為の繰り返された回数等が極めて多数回に上っているうえ、原告両名が本件各行為の中止を求めたにもかかわらず、被告三名は右活動を止めないばかりか、その回数を増加させており、仮処分の決定が出て、ようやく本件街宣行為を中止していること、新聞記事に至っては仮処分の申立て後にも「不倫強要の疑惑」に関する記事や別紙記事概要二記載の内容の記事を掲載していること(甲八の32、乙一六)などにかんがみれば、将来も本件各行為と同様の行為を繰り返す蓋然性があると認められる。

したがって、原告両名は、人格権としての名誉権に基づき、被告四国タイムズ社に対して、別紙記事概要記載の記事(ただし、原告香川銀行は同概要記載の一1(1) (2) 、2及び二の記事の限度で)を掲載し、頒布する行為の差し止めを、被告三名に対し、別紙放送文句概要記載の放送文句(ただし、原告香川銀行は同概要記載の1(1) (2) 及び2の放送文句の限度で)を、街頭宣伝車により放送する行為の差し止めを求めることができると解するのが相当である(ただし、原告両名が場所的限定をした請求の限度で認容する。)。

4  謝罪広告について

本件街宣行為に対する謝罪広告については、その活動日数及び回数等に照らせば、原告大林の自宅や原告香川銀行の周辺に住む住民のほか、当時近辺を通行した者の多くが放送を耳にしたことが容易に推認されるが、すでにみた諸事情にかんがみると、県内全域に頒布されている四国新聞に掲載しなければ、原告両名の侵害された権利が不法行為のなされる前の状態にまで回復しないとまではいえないというべきである。

また、別紙記事概要記載の記事の掲載についても、すでにみた諸事情に照らせば、四国タイムズ上において謝罪広告を認めれば足り、四国新聞上での謝罪広告までは認める必要がないというべきである。そして、原告両名は、四国タイムズ上での謝罪広告を求めていないから、本件においては、四国タイムズ上の謝罪広告も認められない。

よって、原告両名の謝罪広告に関する請求は理由がない。

五  以上の次第であるから、その余の検討をするまでもなく、原告大林の本訴請求は、被告四国タイムズ社及び被告Aに対し、民法七〇九条に基づき、連帯して損害賠償金二〇〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成一〇年四月八日から各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、被告推進会に対して損害賠償金八〇万円及び同日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求め、被告四国タイムズ社に対して別紙記事概要記載の内容の記事を掲載頒布する行為の差し止めを、被告三名に対し別紙放送文句概要記載の内容の街宣活動の差し止めを求める限度で理由があるのでその限度でこれを認容することとし、その余の請求は理由がないのでこれを棄却する。

また、原告香川銀行の本訴請求は、被告四国タイムズ社及び被告Aに対し、民法七〇九条に基づき、連帯して損害賠償金一〇〇万円及びこれに対する同日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、被告推進会に対して損害賠償金四〇万円及び同日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、被告四国タイムズ社に対して別紙記事概要記載の一1(1) (2) 、2及び二の記事を掲載頒布する行為の差し止めを、被告三名に対し別紙放送文句概要記載の1(1) (2) 及び2の街宣活動の差し止めを求める限度で理由があるので、その限度でこれを認容することとし、その余の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 馬渕勉 裁判官 佐藤明 裁判官 佐藤弘規)

物件目録

一 原告株式会社香川銀行本店

所在 高松市亀井町六番地一

家屋番号 六番一

主たる建物

種類 店舗・事務所

構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付九階建

床面積 一階 七六八・四七平方メートル

二階 四七六・〇五平方メートル

三階 七一七・一〇平方メートル

四階 七一七・一〇平方メートル

五階 七一九・八五平方メートル

六階 七一九・八五平方メートル

七階 七一四・七五平方メートル

八階 四三三・三七平方メートル

九階 一〇四・四三平方メートル

地下一階 一二九八・〇七平方メートル

付属建物

符号1

種類 車庫

構造 鉄骨造鋼鈑葺平家建

床面積 六二・六〇平方メートル

二 原告大林一友居宅

所在 高松市藤塚町三丁目一〇四番地一、一〇五番地九

家屋番号 一〇四番一

種類 居宅

構造 木造スレート葺二階建

床面積 一階 一八〇・三九平方メートル

二階 五八・九九平方メートル

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